守進 ※R-18
- pwannex
- 8月23日
- 読了時間: 8分
心地よいまどろみから目が覚めた進は、目の前にある兄の顔に驚いて声を上げそうになった。よく瓜二つの容貌をしているとは評されるものの、こうして兄のおそろしく整った顔立ちを間近で見ると、本当にそうなのだろうかと懐疑的になってしまう。
(兄さんと……したんだった)
昨夜のことを思い出した進は気恥ずかしさに頬を染める。
仲のよすぎる兄弟。それが進と守の兄弟仲に対する世間の評価だった。それは間違った認識ではなく、昨晩も守は進の住むマンションを訪れ、一緒に食事をし、風呂に入り、宿泊していった。
守は進を溺愛している。それは傍目にもわかるほどで、過干渉と言っても過言ではなかった。進はそんな兄を煩わしく思うこともあったが、自分を可愛がってくれることが嬉しいという気持ちも確かだった。
昨晩、進は守と初めて肉体的な関係を結んだ。
もちろんその行為の意味するところもわかっていたし、戸惑いもあったが、抑えられなかったのだ。
守は進の全身を優しく愛撫し、キスの雨を降らせ、その体を貫いた。痛みはあったが、それ以上に守に愛されているという事実が進は嬉しかった。
守が目覚める前にと進はベッドから抜け出す。寝室の床には服が脱ぎ散らかされており、下着も身につけていなかった。
進は重い腰を引き摺りながらバスルームに向かう。
洗面台の鏡に写った自分の姿に進は思わず赤面した。首筋や鎖骨、肩、胸など、いたるところに赤い痕がつけられている。昨晩「痕を付けてもいいか?」と兄に訊ねられ、「好きなだけ付けてください」と頷いたのだった。
我ながら大胆なことを言ったものだ。守の唇が触れた箇所を指先でなぞると、昨夜のことを思い出して胸のあたりがざわつくと同時に、恥ずかしさに身悶えしたくなる。
(兄さんが起きたら、どんな顔をしたらいいんだろう)
進はいたたまれなくなって鏡から視線を逸らす。それからシャワーで軽く身体を流したのちに、浴室を出てタオルで全身を拭い始めた。
「進」
不意に背後から守に抱き締められ、驚いた進の手からバスタオルが落ちる。守はそんな進を背後から抱き締めたまま、首筋に顔を埋めて鼻を寄せてきた。
「おはよう、進」
「おはようございます、兄さん」
まだ互いに服も着ていない。素肌同士が触れ合う感覚に進は昨晩の行為を思い出し、自分の身体が緊張に強ばるのを感じた。
守は一見すると細身に見えるが、強打者だけあってその体躯は良質な筋肉に覆われている。長身も相俟って美しい造形をしたその肢体に憧れることはあったものの、それに対してある種の劣情を喚起されることがあるとは思わなかったし、あってはならないはずだった。
「身体は大丈夫か?」
「はい」
「そうか」
短い言葉を交わしたのちに、守は進の顎を掬い上げて唇を重ねた。啄むようなキスを繰り返し、舌を差し入れては絡ませる。
「兄さん、僕まだ濡れてるから……兄さんまで濡れちゃうよ」
「構わない」
守は進の体を反転させると正面から抱きすくめて更に深く口づけた。汗ばんだ胸同士がぴったりとくっつき、皮膚を通して互いの鼓動を伝えてくる。兄の強引さには困らされることも多いが、このときばかりは嫌ではなかった。
「ん……っ」
守の舌が進の口内を蹂躙し、歯列をなぞっては舌を絡ませて吸い上げる。進は縋るように守の背に腕を回すと、自分からも舌を差し出してそれに応えた。
「……ふ、……ぅ」
どちらのものともつかない唾液が進の口の端から零れ落ちる。呼吸をしようと唇を離したあたりで守の手が背中に回され、素肌を直に愛撫される感覚に進は身体を震わせた。
「兄さん……っ」
その手が明確な意図をもって動き始めたことに気づいた進は慌てて守の胸を押し返す。
「兄さん、まだ朝だよ」
「だからどうした」
「どうしたって……」
「時間ならあるだろう。今日はオフだ」
守は身を屈めて進の胸の突起を口に含む。そのまま舌先で転がすように刺激され、進の背筋がびくりと跳ね上がった。
「進、可愛いよ」
「……っあ!」
守の手に自身を包み込まれ、進は悲鳴じみた声を上げた。
守の手がやわやわと動くたびに進のそこは次第に芯を持ち始める。掌で形をなぞられては爪で先端を引っ掻かれ、進は無意識のうちに腰を揺らしていた。
「……っあ! あ……っんん!」
手の動きに合わせて腰を揺らめかせると、守が喉奥で笑ったのが聞こえる。進は恥ずかしさのあまり守から顔を背けるが、頬に手を添えられてやんわりと正面を向かされた。
「進、ボクを見ていろ」
「に、兄さん……っ」
「いい子だ」
よく通る低い声で囁かれ、進の身体にぞくりとした何かが走る。
立ち上がった性器を握り込んで先端をぐりぐりと刺激されると、溢れた雫が守の手を濡らした。それを潤滑油にして守は手の動きを早め、進を絶頂へと追い詰めていく。
「ああぅ……! に、さ……っ」
摩擦で先走りが泡を立て、ずちゅずちゅという卑猥な音が浴室に響いた。
限界が近いことを感じ取った進が守に縋り付くと、守はそれを合図と取ったのか手の動きを早める。親指の腹で先端を強く押し込まれた瞬間、進はビクビクと震えながら声もなく達した。
「あ……ああ……っ」
力が抜けて崩れ落ちそうになったところで守に腕を掴まれる。そのまま浴室の壁に押し付けられたかと思うと、守の腕がするりと股のあいだに入り込んできた。
「こ、ここでするんですか?」
片足を担がれ、秘部を晒された進は羞恥に頬を赤く染める。守はそんな進の耳元に唇を寄せ、耳朶を食みながら囁いた。
「ああ。お前の可愛いところを見ていたら我慢できなくなった」
「……っあ!」
守の指が後孔に差し込まれ、ゆっくりと中を探るように動く。昨夜も愛されたそこは柔らかく解れており、守の指を難なく呑み込んで吸い付いた。
「ん……あっ! ああぅ……っ」
二本、三本と指が増え、体内で動かされるたびに進の口から嬌声が零れる。それを繰り返して窄まりが充分に解れてきたころ、守はゆっくりと指を引き抜いた。知らず「あっ」と惜しむような吐息を零してしまい、そんな自分に気づいた進は慌てて口を噤む。
「進、いいか?」
「はい……」
進は問いかけに小さく頷く。それを確認した守は自身の性器を握り込み、上下に軽く扱いて挿入の準備を始めた。
猛った兄の性器が視界へと入り、その光景に進は思わず息を飲む。
兄の性器を見る機会はこれまでもあったが、勃起した状態を見るのは初めてだった。昨晩だって、電気を消して行為に及んだためこんなにはっきりとは見えなかったのだ。
「兄さんの……すごい……」
思わずそう口にすると、守は苦笑して進の頬にキスを落とした。何がすごいと意識して口にしたわけではなく、あえて言うならこの状況に対して漏れた言葉のように思う。
「あまり煽らないでくれ」
「……っ!」
守は自身を何度か擦り上げたのちにその先端を進の秘部に宛がった。先走りを塗り込めるように何度か窄まりをなぞったあと、ゆっくりと亀頭を押し進めていく。
「ああ……っん!」
昨夜も受け入れたとはいえ、指とは比べものにならない質量に進は息を詰める。そんな進を宥めるように顔中にキスを繰り返しながら、守は少しずつ腰を進めていった。
「んん……っはあ……!」
時間をかけて根元まで埋め込み、守が息をついたのを合図に進は呼吸を整える。守はしばらくのあいだ動かずに待っていたが、進の呼吸が落ち着いたと見ると動き始めた。
「あっ! にいさ……っ」
ギリギリまで引き抜いて再び奥まで挿入されると、守が昨晩出した精液が掻き出されて溢れ出す。それがぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てるものだから、進は恥ずかしくて耳を塞ぎたくなってしまった。
「あっ……ぁんっ……んんっ!」
激しい抽挿を繰り返すたびに進の身体が弾み、奥を何度も亀頭で突き上げられる。耳元では守の荒い呼吸が聞こえ、熱い吐息が進の耳朶をくすぐった。
「んっ、ん……! に、さん……っ!」
「……っ、進……!」
守の首に腕を回して縋り付くと、守は進を抱き寄せてさらに激しく腰を打ち付けた。ガクガクと揺さぶられ、激しく突き上げられる刺激に進の体内がきつく締まる。
「ああぅ……! あ……っ! あああっ!」
ぐりっと勢いよく最奥を突かれた瞬間、進は頭が真っ白になるような感覚に襲われた。同時に守も達したらしく、腹の奥へと熱い飛沫が注ぎ込まれる。その感覚を最後に進はふつりと意識を失った。
気怠さの中で目を覚ました進は自分がベッドの上にいることに気がついた。いつの間にか身体は清められており、寝間着に着替えさせられている。そして隣には同じく寝間着姿の守が眠っていた。
(兄さんの寝顔って可愛いな)
進は兄の寝顔を眺めながら目を細める。
起きているときは精悍で頼り甲斐のある兄も、寝ているときばかりは無防備だ。子供の頃と変わらない寝顔を前にして、進は思わずくすりと笑みを零した。
「ん……」
守が身動ぎをしてゆっくりと瞼を開く。そして隣で寝そべっている進に気がつくと柔らかく微笑んだ。
「おはよう、進」
「おはようございます。もうお昼ですよ、兄さん」
まだ少し寝惚けているのか、舌足らずな声で言う兄の様子がおかしくて進は小さく笑う。
「身体はつらくないか?」
「はい」
進が頷くと、守はよかったとつぶやいて進の体を抱き寄せた。そのまま抱き枕のように抱き締められ、進は気恥ずかしさに頬を赤く染める。
「兄さん……そろそろ起きませんか? 僕お腹空いちゃいました」
「そうだな。進は疲れているだろうから今日はボクが作ろう」
「兄さんが?」
料理なんてしたことないでしょう、と暗に言葉に含ませると守は苦笑を零す。
「ホットケーキくらいは作れるぞ」
「本当ですか?」
「市販の具材を混ぜて焼くだけだろう? そんなに疑うな」
半信半疑な様子の進とは裏腹に守は自信ありげに微笑む。
この笑顔はおそらく「最近作り方を覚えたから披露したい」ということなのだろう―――そう察した進はそれ以上追求しないことにした。
数分後、思いのほかまともなホットケーキが食卓へと運ばれてきて進は驚くことになるのだが、案の定と言うべきか味付けには少し難があったのだった。