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守進 ※R-15

  • pwannex
  • 5月25日
  • 読了時間: 5分

更新日:5月31日

 進の本命は神童だと勘違いしている守の話


 腕の中で寝息を立てる弟を眺めながら、守はひとつ息をついた。

 可愛い弟。大切で、愛おしくて、守ってやりたくて――そんな純粋な気持ちが、いつから性愛を伴うものへと変化したのかはわからない。

 気付いた時にはもう手遅れだった。いつからか、守は進に対して兄弟以上の感情を抱くようになっていた。それは決して許されぬ想いだということはわかっていたのだが、それでも止められなかったのだ。

 一線を超えるきっかけとなったのは神童の結婚だった。

 進はきっと、神童を愛していたのだろう。だからこそ守は進のアメリカ行きの背を押したのだし、それが進にとっての幸福なのだと思っていた。

 だが、神童は違ったようだ。

 神童の結婚式のあと、泣き腫らした目をしていた進を守は抱いた。ボクには進が必要なんだと、そう伝えながら何度も口付けた。

 進は誰かに必要とされることによって自分の存在価値を見出す傾向があった。だから、だから、進を慰めた……というのは体のいい言い訳に過ぎないのだろう。

 守は、ずっと進を愛していたのだから。心の中に押し込めていただけで、きっとずっと、進を抱きたかったのだ。

 それからというもの、守と進は何度も体を重ねた。最初は罪悪感に苛まれたが、それも次第に慣れてしまって――今ではこうして当たり前のように兄弟同士で愛し合うようになっていた。

「ん……にいさん……?」

 不意に名前を呼ばれて視線を下ろせば、進が戸惑ったような瞳で守を見上げていた。潤んだ紫色の目尻にはうっすらと赤が差していて、子供の頃と変わらない表情にいくばくの懐かしさと背徳感が湧き上がる。

「……悪い、考え事をしていた」

 すまないと言いながら頭を撫でると、進は気持ち良さそうに目を細めた。それから守の胸に顔を埋め、甘えるように擦り寄ってくる。そんな仕種のひとつひとつが愛しくて堪らなかった。

「兄さん」

「どうした?」

「……大好きだよ」

 ああ、本当に可愛いやつだなと思いながら守は再び進の頭を撫でてやる。

 子供の頃から、兄さん兄さんと後ろをついてきた可愛い弟。大人になった進にはもう自分は必要ないのだと思っていたし、兄としてそれは喜ぶべきものだと思うようにしていた。

 それでもまた、こうして自分を必要としてくれることが嬉しくてたまらない。

「ボクもだよ」

 そう言って微笑むと、進も嬉しそうに微笑んでくれた。その笑顔に愛しさが募り、守は弟を抱き締める腕に力を込める。

 湿った肌同士が触れ合えば進は「あっ」と艶のある声を上げて――それだけは昔と大きく違うところだった。




 ある日の深夜、目を覚ました進は自分を抱き締める兄の寝顔をそっと見上げた。

 守はたぶん、大きな勘違いをしている。進が、神童のことを恋愛対象として好きだと……だから、神童が結婚したせいで弟がやけを起こしたのだと、そう思っているのだろう。

 だけど、それは違うんだ。進は言いかけた言葉を喉元で飲み込んだ。

 確かに進は神童が好きだ。けれど、それは尊敬としてであり、憧憬としてである。

 神童が結婚したとき、寂しくて仕方なくて、涙が止まらなかったのは本当だが……それは、例えるなら家族や恋人遠いところに行ってしまうような、そんな類の寂しさだったのだ。

 だが、守のその勘違いは進にとっては都合がよかった。きっと、きっかけがなければ守は弟を抱こうとは思わなかっただろうから。

 学生の頃の守は、弟を自分の所有物のように思っていた節があった。弟を溺愛して庇護する一方で、弟が「兄の庇護がなければだめな弟」であることを望んでいた。

 進はそれが嫌だった。確かに兄に守られているのは心地よかったが――それと同時に寂しくもあったのだ。守が進に向けている愛情は、あくまで庇護対象に対するそれでしかなかったから。

 進を一人前の人間として認めてくれるようになってからは、守は進の意思を尊重するようになった。だから、進が神童を愛しているのなら、自分はその背中を押そうと考えていたのだろう。

 そこまで想像して、進は思わず小さく笑ってしまった。

「……兄さん」

 進は隣で眠る守の頰に手を添えてそっと囁く。

 兄弟でこんなこと、なんて、思わないわけでないけれど。そんな背徳感よりも、兄とこうしていられる幸せのほうが勝ってしまうのだから仕方ない。

 そんなことを考えていると、いつの間にか、眠っていたはずの守の瞳が開かれていた。驚く進に構うことなく、守はそのまま覆い被さるようにして弟を抱き締める。

「……起きてたんですか?」

「ああ」

 守は問い掛けに短く答えながら進の首筋に顔を埋めた。兄の柔らかい髪がくすぐったくて、進は思わず身を捩る。

 ――ボクがいちばんじゃなくてもいい。

 初めて進を抱くときに守が言った言葉だ。それを思い出すたびに、進の脳裏にはそのときの自分自身の戸惑いと、守の勘違いに気がついたおかしさが込み上げてくる。

 だって、僕は兄さんがいちばんなのに。兄さん以外なんていらないのに……

 そんな簡単なことにも気がつかないくらい、守は進しか見えていなかったのだ。そう思うと、進は兄が無性にいじらしくて愛しくてたまらなくなった。

「兄さん」

「……なんだ?」

 呼び掛けに応えて顔を上げた守の頰を両手で包み込んで、進はそっと唇を重ねた。

「大好きだよ」

 進がそう囁くと、守は少しだけ困ったような、切なそうな顔をしてから「ボクも愛してるよ」と応えてくれた。

 優しくて可愛い兄さん。僕の大切な、最愛の人。

 兄さんのそれは勘違いなんだよと、いつかは伝えるつもりではいる。けれど、もうしばらくは気がついていないふりをしても許されるだろうか?

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